金継ぎは簡単な技法ではありません。
一連の作業の中には初心者の方がつまづきやすいポイントも多く存在します。
この記事では、そんな典型的な失敗例をいくつか紹介したいと思います。
温度管理が不十分
漆が乾くのに湿度が必要ということは何度もお伝えしているので理解されている方が多いかと思いますが、温度も重要な要素です。
作業後、濡れタオルを入れた段ボールで器を保管していても、一晩待っているうちに夜間冷え込んでしまい、漆の硬化が十分に進まないというケースがあります。
漆は寒いと固まらないので、湿度だけでなく、温度にも注意するようにしましょう。
接着時にズレる
金継ぎで取り返しのつかない失敗のうちの一つです。
接着時のズレの原因はいくつかあります。
一つは、接着時にすでにズレてしまっているケース。
これは接着する時に十分に密着・圧着できていないと発生します。
破片が多いとよりズレやすくなってしまいますが、破片を一つ接着するたびにしっかりマスキングテープで固定しながら進めましょう。
もう一つは接着後に徐々にズレてしまうケース。
これは大きな器などに起こりやすいですが、重力を受けて少しずつ断面がズレてしまうことが原因です。
こちらも対策としては、しっかりマスキングテープで固定すること。
また、プレートなど薄い器は縦向きに、茶碗などはひっくり返すなど、重力に逆らわない向きで保管することも有効です。
器に油分や塩分が残っている
漆は塩分や油分が混ざると乾きが極端に悪くなります。
器に汚れが残っている場合は、修理前に一度洗剤で洗い、しっかり乾かしてから修理を開始するようにしましょう。
乾燥した錆漆・こくそ漆を無理やり塗る
錆漆やこくそ漆など、砥の粉を混ぜたペーストは水分が蒸発しやすく、すぐにパサついてしまいます。
そのような状態のペーストは馴染みが悪く、固まった後で剥がれやすくなってしまいます。
乾いてしまった時は、無理に使おうとせず、もう一度作り直すようにしましょう。
真綿でうまく金粉を蒔けない
金粉をうまく蒔けないという相談は非常に多いです。
主には2つの原因が考えられます。
1つは弁柄漆を十分に薄く濡れていないということ。
かすれる直前まで薄く塗らないと、金粉を蒔いても漆の中に金粉が沈んでいってしまいます。
もう一つは真綿の使い方にあります。
例えば、綿を強く押し当ててしまっていることや、毛羽立ちのない平らな面を作らずに金粉を蒔いてしまっていることなどが挙げられます。
綿の使い方で重要なことは、綿自体を弁柄漆に当てないことです。
理想的には、綿についた金粉だけが弁柄漆に触れるようにさせる必要があります。
そのためには、真綿にたっぷりと金粉を含ませることも非常に重要です。
綿だけではどうしても難しいという場合は、あしらい毛棒を使うことでより安全に金粉を蒔くことができます。
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