金継ぎとは、陶磁器の修理でできた継ぎ目を金で装飾する技法ですが、一口に金継ぎと言っても、実はさまざまな種類に分けることができます。
まずは簡単に金継ぎの手順のおさらいですが、金継ぎは主に以下の工程から成り立っています。
- 壊れた状態からもう一度使える状態に「修理」する工程
- 修理してできた継ぎ目を金色に「装飾」する工程
そして、これらの工程でどのような材料を使うかで、金継ぎの種類も分かれてきます。
つまり金継ぎの種類は、次の2つの観点で分類することができます。
- どのような材料で修理をするか
- 継ぎ目を何で装飾するか
修理で使う材料による分類
まずは「1. どのような材料で修理をするか」という観点について説明します。
ここで主に論点になるのは「漆を使うかどうか」です。
この観点から分類すると、金継ぎは大きく次の2つに分けることができます。
1-1 漆を使う(伝統的な金継ぎ)
1-2 漆を使わない(簡易金継ぎ)
一つずつ見ていきましょう。
1-1 漆を使う(伝統的な金継ぎ)
日本の伝統的な金継ぎでは「漆」が長く使われてきました。
漆は硬化すると非常に硬くなる天然の樹脂であり、硬化すれば人体に無害ということで、堅牢な修理材として長く使われていました。
また、漆は塗料として使うこともできるため、古来より日本の工芸装飾に使われ、その長い歴史の中で、繊細で美しい仕上がりを得るための技法が確立されてきました。
漆を使った伝統的な金継ぎは、これらの技法を用いることでまるで工芸品のような美しい仕上がりを実現することができます。
ただ、作業中に触れるとかぶれてしまうことがありますし、硬化に数日かかるというデメリットがあります。
このデメリットを補う形で近年行われるようになってきたのが次に紹介する「簡易金継ぎ」です。
1-2 漆を使わない(簡易金継ぎ)
伝統的な金継ぎの漆を使う手順において、漆を合成樹脂や市販の接着剤などに置き換えて修理を行うものは「簡易金継ぎ」や「現代風金継ぎ」などと呼ばれます。
例えば、次のような置き換えがよくあるパターンです。
- 割れた破片を接着する工程で、漆の代わりに接着剤やエポキシ樹脂を使う
- 欠けた部分を埋める工程で、漆の代わりにエポキシ樹脂を使う
- 継ぎ目をコーティングする工程で、漆の代わりに合成樹脂塗料を使う
これら以外にもさまざまなパターンがありますが、共通点は「漆」を別のものに置き換えているという点です。
メリットとしては、漆を置き換えているので、かぶれることもありませんし、硬化する時間も短縮されます。
デメリットとしては、食器として使う上で安全性に懸念があることや、仕上がりの美しさに欠けるという点があります。
(とはいえ、エポキシ樹脂で接着して、新うるしなどの合成樹脂塗料でコーティングする方法で丁寧に作業すれば、漆で作業した時とぱっと見では区別できないくらいの見栄えにすることも可能です)
仕上げ方による分類
次に仕上げ方による違いを見ていきましょう。
継ぎ目の装飾に使うのは主に金粉ですが、何を使って継ぎ目を装飾するかで金継ぎの種類も分かれてきます。
代表的な物だけでも以下のような種類があります。
1. 純金
1-1 消粉
1-2 丸粉
2. 代替金粉
2-1 真鍮粉
2-2 マイカ粉
3. 金以外での仕上げ
3-1 銀粉
3-2 漆仕上げ
1. 純金
伝統的な金継ぎでよく使われるのが純金です。
本物の金になるので必然的に高価な修理となってしまいますが、金は錆びることがなく、他の素材では実現することのできない光沢感を得ることができます。
この純金粉にも様々種類はありますが、粒子の大きさによって主に「消粉」と「丸粉」に分けることができます。
1-1 消粉
金箔を粉末状に砕いた、非常に粒子の細かい純金粉のことを「消粉」と呼びます。
仕上げで使う場合は、真綿を使って継ぎ目に塗るだけでマットな光沢を得ることができます。
「丸粉」に比べると作業が簡単で初心者にオススメなので、オンラインストアで販売しているキットにも「消粉」を入れています。
1-2 丸粉
「丸粉」は地金をやすりでおろして作られ、消粉よりも粒子が大きいのが特徴です。
真綿を使って仕上げるだけではほとんど光沢が出ないため、蒔き終えた後に丸粉の表面をやすりで磨いて光沢を出します。
消粉より粒子が大きいとはいえ、かなり細かい粒子であることには変わりないので、 綺麗に磨き上げるには相応の技術が必要になります。
初心者向きではありませんが、消粉では得られない煌びやかな光沢を得ることができます。
また、消粉より粒子が大きい分、普段使いの中で摩耗しにくいというメリットもあります。
2. 代替金粉
簡易金継ぎでよく使われるのが「代替金粉」です。
代替というのは「純金」の代わりに使っている金粉という意味合いです。
高価な純金の代わりに、見た目の似ている「真鍮粉」や「マイカ粉」などがよく使われます。
2-1 真鍮粉
真鍮というのは、銅と亜鉛を混ぜた金属のことです。
消粉に似た色味や光沢感を得ることができます。
ただし、純金と違って経年変化で錆びてしまうので、継ぎ目の色は少しずつくすんでいきます。
2-2 マイカパウダー
マイカパウダーとは、天然鉱物である雲母(マイカ) を人工的に生成し粉末状にしたものです。
簡易金継ぎではこれを金色に着色したものが用いられます。
金色をしていますが、純金とは光沢も色味も大きく異なっています。
3. 金以外での仕上げ
実は金以外で仕上げることもできます。
銀で仕上げる場合は「銀継ぎ」、金属粉を使わず漆で仕上げる場合は「漆継ぎ」などと、様々な仕上げ方があるのです。
3-1 銀粉
「銀継ぎ」をする場合には「銀粉」を使います。
金継ぎと同様に、純銀もあれば錫などの代替粉もあり、純銀の場合は消粉や丸粉もあります。
ただし、純金とは違い純銀は経年で色がくすんでいくので、見栄えを保ちたい場合はプラチナを使って仕上げることもできます。
3-2 漆仕上げ
「漆継ぎ」ではその名の通り、継ぎ目に好きな色の漆を塗って仕上げとします。
漆は硬化すると耐水性の堅牢な塗膜となるので、継ぎ目を金属粉でコーティングせずとも日常使いすることができます。
また、金属を使わないので電子レンジで使えるようになるというメリットもあります。
まとめ
たくさん紹介してしまいましたが、基本的には次の2点を押さえておけば大枠は捉えられるかなと思います。
- 修理に漆を使うかどうか
- 仕上げにはどんな種類の金粉を使うのか
特にこれから金継ぎを始めてみたいという方は、通われる教室や購入する予定のキットで使われている材料を、この2つの観点から確認しておくとミスマッチがなくなるかと思います。
よければ参考にしてみてください。
コメントを書く
このサイトはhCaptchaによって保護されており、hCaptchaプライバシーポリシーおよび利用規約が適用されます。