なぜ金継ぎにエタノールが必要か
伝統的な金継ぎでは、各工程で必ず「漆」を使います。
作業後のヘラや作業台に残った「漆」は水や石鹸で洗い流せず、拭き取る際には有機溶剤が必要になります。
数ある有機溶剤の中でも「エタノール」は比較的安全で使い勝手が良いので、自分が普段修理する時も、教室で教えている時も漆の洗浄にはエタノールを使っています。
ちなみに、コロナ禍で消毒用に広く使われていたアルコールもこの「エタノール」です。
エタノール以外でも洗浄は可能
とはいえ、絶対にエタノールである必要はありません。
金継ぎでよく使われる有機溶剤としては以下のようなものがあります。
- テレピン油
- 樟脳油
- 灯油
- メタノール
- IPA(イソプロピルアルコール)
ただし、どれもエタノールに比べると毒性の強いものが多く、十分に換気しないと頭痛などの体調不良につながることがあります。
漆の世界ではエタノールよりもテレピンが使われることの方が多い印象ですが、自分はどれだけ強く換気してもテレピン油を使うと頭痛が起こるので、もう長いことエタノールしか使っていません。(もちろん体質によると思いますが)
特に、「メタノール」はエタノールと名前がとてもよく似ていますが、かなり毒性が強く、使い方を誤ると失明のリスクもありますので、よほど事情がない限りはオススメしません。
選ぶときのポイント
一口にエタノールと言っても、Amazonで調べるとかなり多くの種類の商品がヒットします。
金継ぎに適したものを選ぶ場合は以下のポイントを押さえると良いでしょう。
1. 純度の高いものを選ぶ
エタノールはアルコール濃度によっていくつか種類が分かれます。
- 無水エタノール(99.5%)
- エタノール(95.1~96.9%)
- 消毒用エタノール(76.9~81.4%)
消毒用エタノールは薬局でもよく販売されており、漆の洗浄にも使えなくはないですが、アルコール濃度が低い分水分量が多く、漆を拭き取るときに水分が残って少し使いづらいです。
薬局などでは手に入れづらいですが、漆の洗浄のしやすさを考えると、「無水エタノール」が最もおすすめとなります。
2. 添加物を確認する
同じ無水エタノールでも、商品名に「IPA」や「IP」と書かれている場合があります。
エタノールはお酒に含まれるアルコールでもあるので、純粋なエタノールは酒税がかかります。
そこで、IPA(イソプロパノール)など、人体に有毒な成分を微量添加させることで飲用不可な状態にし、酒税がかからないようにしたものが「IPA」と併記されたエタノールです。
国によっては「変性エタノール」いう名前で販売されていることもありますが、たまにIPAではなく「メタノール」が添加されている場合があります。
繰り返しになりますが、メタノールは非常に毒性が強いため、金継ぎで使う際には、純粋な無水エタノールか、IPAが少量(10%程度)添加された無水エタノールをオススメします。
おすすめのエタノール
最後に市販されているエタノールで自分がよく使っているものを紹介して終わりにしたいと思います。
日本国内だと「健栄製薬 無水エタノール」が安定して入手しやすいかと思います。
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アメリカの場合は、こちらの変性無水エタノールがおすすめです。
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イギリスの場合は、無水エタノールを見つけることが難しいですが、こちらは比較的純度の高い変性エタノールです。
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