金継ぎに必要な道具や材料には専門的なものが多く、一から揃えようと思うとなかなか難しいものです。
そこで、必要な道具や材料を一式揃えてくれている「金継ぎキット」がこの頃はたくさん販売されています。
むしろたくさんありすぎて、どれを選べばいいのかわかりづらくなっているくらいです。
今回は、そんな金継ぎキットの選び方や、それぞれの違いについて解説する記事にしていきたいと思います。
高いキットと安いキットの違い
Amazonで「金継ぎキット」と調べると、数千円のものから1万円を超えるものまで、色々と出てきます。
一体、何によってこんなにも価格に差ができているのでしょうか。
わかりやすくするために、ここからは1万円前後の「高いキット」と5,000円前後の「安いキット」の大きく二つに分けて説明していきます。
金継ぎの手法が違う
この二つを分つ大きな違いは「金継ぎの手法」です。
金継ぎとは本来、漆と純金粉を使って修復をする日本古来の技術です。
これを仮に「伝統的な金継ぎ」と呼ぶならば、「高いキット」の多くはこの「伝統的な金継ぎ」の手法を用いて修復を行うためのキットになります。
一方、「安いキット」は「伝統的な金継ぎ」手法の一部を簡略したものがほとんどで、巷では「簡易金継ぎ」と呼ばれることが多いようです。
手法によって使用する材料が違う
では、なぜ手法の違いによって価格がこんなにも違うかというと、使っている材料が違うからです。
「伝統的な金継ぎ」では純金粉や漆を使って修復を行います。
どちらも高価な素材なので、キットの価格もそれだけ上がってしまうというわけです。(0.3gの金粉で5,000円以上します)
一方の「簡易金継ぎ」は、漆をエポキシ樹脂や合成漆などの接着剤に、純金粉を真鍮粉やマイカ粉などの安価な材料に置き換えており、価格もその分お手軽になっています。
では、次からは手法や材料の違いを踏まえた上で、どちらのキットを選ぶべきかについて詳しく説明していきます。
伝統的な金継ぎのメリット
「堅牢さと美しさを兼ね備えている」
伝統的な金継ぎのメリットの一つは、その仕上がりの美しさと堅牢さです。
個人的には、ここが最も優れた点だと思っています。
伝統的な金継ぎ手法は、1000年以上の歴史を持つ漆芸の技法を受け継いでおり、長い歴史の中で洗練されてきた技術や材料を用いることで、堅牢でありながら非常に美しい修理を行うことができます。
歴史や伝統に触れてみたいという方にも、伝統的な金継ぎのキットがオススメです。
「修理後も食器として使える」
多くの接着剤は安全性の観点から食器に使うことができませんが、漆は元々お椀などの塗りに使われている素材でもあり、接着を含め、食器の修理にも問題なく使うことができます。
漆以外の素材も人体に影響のない天然素材を使うので、普段使いの器も修理後に再び食器として使用できます。
伝統的な金継ぎのデメリット
「時間がかかる」
漆を使った修理のデメリットの一つに「時間がかかる」という点が挙げられます。
メリットの裏返しにもなりますが、美しく仕上げるために多くの工程をこなす必要があり、その上、各工程ごとに数日待つ必要があるため、完成まで早くても1ヶ月ほどがかかってしまいます。
例えば、市販の接着剤は早ければ数分で固まってくれますが、金継ぎで使う「麦漆」という接着剤は固まるまでに1週間ほどはかかります。
「かぶれる可能性がある」
これも漆の特性上のデメリットですが、体質によってはかぶれてしまう可能性があります。
生まれつき肌の弱い方や、マンゴーやカシューナッツ、ピスタチオなどの漆科の果実でアレルギー反応が起こる方は、漆でもかぶれやすくなりますので特に注意が必要です。
中には、全身に水脹れのような炎症が1ヶ月以上続いてしまうような方もいらっしゃるので、このリスクは事前にしっかり認識しておきましょう。
簡易金継ぎのメリット
「短時間で修理できる」
簡易金継ぎの大きな魅力に1つに、工程が少なく待ち時間も少ないので、短時間で修理が完了するという点があります。
手法や材料によっても違いますが、早いものだと1日で修理が完成するものもあります。
「安価に修理できる」
伝統的な金継ぎのように本物の漆や金粉を使わず、市販の接着剤やマイカ粉などの安価な材料に置き換えて修理を行うので、キットなども非常にお手頃な価格で手に入れることができます。
簡易金継ぎのデメリット
「食器に使えないものが多い」
市販の接着剤の多くは食器に使えないものがほとんどになっています。
食品衛生法に適合してる接着剤を使っていても、強度や耐熱性に欠けていたりするものが多いので、注意が必要です。
細かい話をすると環境ホルモンのことなど、他にも懸念点はありますが、細かすぎるのでここでは割愛します。
「美しく仕上げるのが難しい」
伝統的な手法を簡略化したものなので、どうしても仕上がりは荒くなってしまいがちです。
引きで撮られた写真をスマホの画面越しに見ている分にはそこまで気にならないかもしれませんが、実際にご自身の手に取って見た時に、その差をはっきりと感じられると思います。
キットの種類の見分け方
Amazonで「金継ぎキット」と検索するとたくさんにキットがヒットしますが、果たしてこれらのキットがどちらの金継ぎなのか、どう見分けたらよいのでしょうか。
ここでは簡単な指標として「価格帯」と「内容品に漆が入っているか」で判断する方法をご紹介します。
価格帯
大体の場合は、価格が答えになっていることが多い。
5,000円前後かそれ以下のキットは基本的に簡易キットです。
なぜなら本物の金粉の原価は0.3gで少なくとも5,000円以上はするからです。
本物の漆が入っているか
ただし、簡易キットでも1万円近くするものもあります。
そこでもう一つ「本物の漆が入っているか」という観点でもチェックしておきましょう。
伝統的なキットはエポキシなどの接着剤の代わりに「漆」を使って接着するので、「漆」が入っていないキットは基本的に全て簡易キットと思って大丈夫です。
ここで「本物の」と言ったのは、「うるし」という名前を冠した食器に使えない化学接着剤が販売されているからです。
よく見かけるのは「新うるし」や「特製うるし」「高級うるし」といった名前の接着剤を使っているキットですが、全て本物の漆ではなく、うるしという名を冠し普通の接着剤なのでご注意ください。
「漆」ではなく「うるし」と、ひらがな表記されているのが見分けるポイントです。
どちらがオススメか
基本的には、先ほどご紹介したそれぞれのメリット・デメリットを踏まえてご自身にあったものを選ばれるとよいかと思います。
漆の金継ぎをしている身からすると伝統的な金継ぎをオススメしたいというのが本心ではありますが、そうは言っても金額も安くはありませんし、時間もかかります。
そう言った観点からみると、予算をかけずに気軽に金継ぎに触れてみたいという方にとっては簡易金継ぎのキットも1つの選択肢になるのかなと思います。
あとは、修理後に食器として安心して使えるかどうかも1つの判断軸にもなります。
フードセーフにこだわるなら伝統的なキット一択になりますが、安全性にそこまで神経尖らせてないよという方には簡易キットも良いのかなと思います。
そして、もし伝統的な金継ぎを体験してみたいなという方は、うちで作っているキットも選択肢の一つとして検討してくれたら嬉しいです。
金継ぎキットは色々ありますが、市販されている伝統的なキットの中では、材料の選定にも手順の詳しさにもかなり拘っているつもりです。
伝統的な金継ぎは簡単ではないので、補助的な材料も全部含んだStandardキットがオススメですが、材料費が嵩んで価格が高めなので、予算が合わない人は最低限の材料を含んだBasicキットも販売しているので、ご自身に合った方を選んでいただけると良いかなと思います。
もしご質問等あれば、こちらの記事に直接コメントいただければ、できる限り返信しますので、お気軽にお問い合わせください!
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