金継ぎとは

主役は漆

金継ぎ(きんつぎ)は、漆と金を使った器の修理技法です。

たまに、金を溶かして接着しているのだと勘違いされている方がいらっしゃいますが、さにあらず。

「金継ぎ」とは言いつつも、主役は「金」ではなく「漆」なのです。

空気中の水分に触れることで硬化・耐水化する漆の特性を生かし、器の欠けや割れ、ヒビを繕います。

そして最後、継ぎ目に金粉を蒔くことで、見た目を整えるのです。

お気に入りの器は、当然壊れずにあることが一番ですが、 漆で継いだものにはまた新たな表情が生まれます。

壊れたからもうおしまい、ではなく、 欠けを補い、割れを継ぐことで、

再び日々の暮らしの中で使うことができます。

金継ぎの手順

そんな金継ぎの手順について、もう少し詳しく紹介しますね。
※私が普段仕事で使っている手法とは異なる、少し簡便化した手順を紹介しています

器の破損状態や素材などによって手法は少しずつ変わってきますが、今回は割れた楽茶碗を例にとって解説します。


まずは割れた破片を接着します。
接着剤には「麦漆」という、水で溶いた小麦粉に生漆を混ぜたものを使います。

断面に「麦漆」を塗ったら、破片を接着していきます。

はみ出した「麦漆」を拭き取り、マスキングテープでズレないように固定します。
この状態で漆がしっかり固まるまで1〜2週間待ちます。

接着ができたら、次は継ぎ目の溝を埋める作業です。
ここでは「錆漆」という、砥粉を水で溶いたものに生漆を混ぜたものを使って継ぎ目の溝を埋めていきます。
一通り埋めたら、余分は拭き取って乾くまで2〜3日待ちます。

「錆漆」が乾いたら、耐水ペーパーで継ぎ目の凹凸を整えていきます。

その上から「黒呂色漆」を塗り、乾くまで2〜3日待ちます。

「黒呂色漆」が乾いたら、また耐水ペーパーで磨いて継ぎ目を平坦に整えます。

継ぎ目が整ったらいよいよ金粉を蒔く準備です。
まずは「弁柄漆」を継ぎ目に薄く塗ります。

15分ほど待って漆が半乾きになったら、真綿を使って金粉(消粉)を蒔いていきます。
蒔き終わったら金粉が定着するまで2〜3日待ちます。

金粉が定着したら、表面を拭き取って完成です。

「金継ぎ」だけじゃない

金継ぎは、もちろん金粉で継ぎ目をあしらった修理方法のことですが、金粉以外の素材で仕上げることも。

例えば、銀粉を使った「銀継ぎ」や、あえて漆の色をそのまま活かす「漆継ぎ」など、金色以外にも仕上げることができます。

ちなみに、銀は金と違って酸化して色がいぶし銀のように変化します。(正しくは硫化ですが)

金は酸化しないため風合いが変わることはありませんが、銀継ぎはこのような経年変化を楽しむことができるのもひとつ特徴です。

経年変化といえば「真鍮」も風合いの変化を楽しむことができる素材です。

酸化する前の「真鍮粉」は金色に近い色で、金よりもかなり安価なため、簡易金継ぎのワークショップなどで多く使われているようです。

ただし、先にも書いたように真鍮は酸化して日を追うごとに色がくすんでしまうので、純金のような金継ぎを期待している場合は注意が必要です。

銀継ぎの茶碗


その他にも「かすがい継ぎ」や「呼び継ぎ」といった少し変わった技法もあります。

「かすがい継ぎ」とは、文字通り「かすがい」を使って割れた器の破片同士を結びつける形で修理する技法のことです。

この手の器だと国立博物館の「馬蝗絆」が有名ですね。

「呼び継ぎ」は、別の器の破片を取り入れて修理するという技法になります。

個人的には河合菜摘さんの作品が好きです。かわいい。

「呼び継ぎ」は、他の器の破片とうまく形を合わせる必要があるので、なかなか狙ってできるものではありませんが、このように足りないパーツは他で補うこともできます。

現代の金継ぎ

先ほども少し解説しましたが、金継ぎは手間と時間のかかる工芸です。

道具も「金粉」や「漆」などあまり身の回りにはないような材料が多いため、独力での金継ぎはどうしても少し敷居が高くなってしまいます。

そこで昨今じわりじわりと人気になってきているのが「簡易金継ぎ」と呼ばれる金継ぎです。

これは読んで字の如く、何かしらの手順を「簡便化」した金継ぎ手法の総称になります。

例えば、接着には漆を使わず市販の接着剤を使用したり、金粉の代わりに「真鍮粉」や「マイカ粉」を使用するなどして、気軽に金継ぎを楽しもうというものです。

接着剤を使えば一瞬で固まるので1日で完結させることもできますし、純金の金粉を使わなければ非常に安価に仕上げることもできるため、まずは雰囲気だけでも金継ぎを体験してみたいという初心者の方にはうってつけの手法になります。

簡易金継ぎの賛否

そんな簡易金継ぎですが、少しネガティブな側面があることも事実です。

例えば、金継ぎワークショップなどで、簡易金継ぎであることを事前に十分に説明せず、参加者を誤解させるようなケースは少なくありません。

有名な金継ぎ教室でも、注意書きをよく読んでみると「仕上げは錫粉を使います(金粉の場合は別料金です)」といった記載がされていることもあり、実は簡易金継ぎだったという場合があります。

そもそも、市販の接着剤などは、安全性の観点から「食器には使用しないでください」と記載されているものがほとんどです。

あらかじめ、参加者がそういった事情を理解した上で簡易金継ぎを選んでいるのであれば問題はないのですが、とはいえどんな違いがあるのか初心者の方からは判断しづらい部分があるのも事実です。(少なくとも1日で完結するようなワークショップは全て簡易金継ぎです)

この辺りの話は過去に記事にしているので参考にしていただければと思います。

金継ぎは独学でもできるのか

ここまで金継ぎについてざっくり説明してきましたが、まだまだ書き尽くせないほどに金継ぎとは奥の深い世界です。

器によって最適な修復方法も変わりますし、金粉や漆などあまり身近にない材料が多いため、独学で金継ぎに挑戦するとなると、ハードルが高くなってしまうのも事実です。

とはいえ、私自身、初めての金継ぎは独学だったので(出来栄えはイマイチでしたが…)、不可能ではありません。

本当は信頼できる金継ぎ師に教わることが最善ではあるのですが、習うと費用もかさみますし、まずは独学でやってみたいという方向けに、個人的にオススメできる方法をいくつかご紹介します。

簡易金継ぎに挑戦する

独学で金継ぎをするのであれば、簡易金継ぎが最もハードルが低いため、個人的にはオススメです。

ただ、簡易金継ぎはどの部分を簡略化するかで手順も材料も大きく異なってくるため、ネットであれこれ検索するとかえって混乱を招きかねません。

そこで、私個人としては、市販されている「金継ぎキット」を購入して簡易金継ぎに挑戦してみることをオススメします。

金継ぎキットの多くは、材料だけでなく手順書も同梱されているため、下手にネットの情報をあれこれ見て自分で材料を集めるよりも失敗するリスクが少なくなりますし、結果的に安く済む場合もあります。

ちなみに、金継ぎラウンジさんのキットは良心的な価格で必要な道具も揃っているので個人的にオススメです。

参照:金継ぎラウンジ

伝統的な金継ぎに挑戦する

せっかくなら本格的な金継ぎに挑戦してみたいという方には、オススメの方法が2つあります。

一つ目は簡易金継ぎ同様、金継ぎキットを使う方法です。

伝統的な金継ぎだと「TSUGUKIT」という金継ぎキットが個人的にはオススメです。

安価で必要な材料が揃えられますし、解説動画をYoutubeで見ることができるので、独学のハードルも低くなるかと思います。



ちなみに金継ぎキットの選び方については、過去に別記事で詳しくまとめているので是非参考にしてみてください。

金継ぎ材料を自前で揃える

先ほども少しお話ししましたが、金継ぎは器の破損状況によって最適な手順が異なってきます。

例えば、ひび割れは少し特殊な工程になりますし、マグカップの取手が割れた場合は麻布を使うこともあります。

そこで2つ目のオススメ方法として、最適な修理方法を探して道具を自前で揃える、という方法があります。

個別の手順については「金継ぎ図書館(https://hatoya-f.com/)」がとても参考になります。様々な直し方を紹介されているHPの代表例です。

また、書籍では「金継ぎ 上達レッスン」という本の中で、かなり多くのパターンの修理方法が紹介されています。(私も未だに読み返すことがあります)


そしてこういった情報を参考にする場合に困るのが、市販の金継ぎキットにはない道具があったりして材料を揃えづらいという点です。

Amazonや楽天で探そうとしても見つからない材料が出てくるので、金継ぎ材料を自前で揃える場合は、箕輪漆工さん(https://urushiya.ocnk.net/)など、漆芸用品を扱っている専門店でまとめて購入するのがオススメです。

これらの専門店なら金継ぎに必要なニッチな商品なども取り扱いがあり、必要な物を一式揃えることができるかと思います。(私も金粉以外は箕輪漆工さんでまとめて買うことが多いです)

ここまで独学してみたい方向けに色々とご紹介しましたが、ここでは詳細に書ききれないこともあるので、もしわからないことなどがあればSNSや問い合わせフォームからいつでもご相談ください!

海外でも話題の金継ぎ

この頃は海外でも「KINTSUGI」がブームになりつつあります。

BBCで金継ぎが特集されたり、金継ぎキットも海外で多く販売されるようになったりしています。

特に簡易金継ぎが取り沙汰されることが多いようで、Instagramでもエポキシを使用した金継ぎに挑戦されている様子が多くみられます。



同時に、海外ではビスフェノールA(エポキシに含まれる成分)の健康影響を懸念して、漆を使った安全な金継ぎ(Food Safe)を志向する人も多いようで、私もたまに海外の方から「この金継ぎキットはFood Safeですか?」と聞かれることがあります。

一方で、金継ぎの器を販売するために自分で器を割っているような方も少なからずいらっしゃるようで、そこは少し悲しい気持ちになります。

国内外に依らず、金継ぎ師として正しい知識を適切に伝えていけるようになりたいものです。

金継ぎの魅力

ここまで金継ぎについて幅広く語ってみましたが、金継ぎのどんな側面に惹かれるかは人それぞれです。

最近は器の修理にとどまらず、金継ぎを取り入れたアクセサリーを販売する方もいらっしゃいます。

参照:booth.pm


このように、一口に金継ぎと言っても様々な種類・楽しみ方があります。

私個人としては、誰かが傷つくようなことがなければ自由な形で金継ぎを楽しんでもらえればと思っているので、この記事があなたにとって新しく金継ぎに触れるきっかけになっていれば嬉しく思います。


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